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深堀り
2021.04.26

パワーアシストスーツは選ぶ時代に。介護でも「中腰姿勢維持」機能に注目を

労働力人口が減少する中、完全には機械化できない分野での軽労化、生産性向上の救世主として注目されるパワーアシストスーツ。さまざまな製品があり、最適な製品を選ぶ時代に入っている。介護では、移乗用の装着型介護ロボットとして扱われてきたが、中腰姿勢のサポート機能にも注目したい。

特許件数、日本は「腰」、欧州は「手指」

我が国では、労働力人口が減少する中で、完全には機械化できない分野で、軽労化、生産性向上の救世主として注目されている。特許庁の定義によると、「身体に装着し、装着者または作業対象に作用することで、身体動作の支援、身体機能の改善・治療等を行うもの」で医療やリハビリ分野も含む。
特許出願件数は2010年頃から急増。この10年で研究開発が活発になっている分野だ。ちなみに、アシスト対象の部位としては日本で「腰」なのに対し、米中は「肘」、欧州は「手指(の関節)」が多い傾向にあるそうだ。

動力の有無と「骨格」で多様なタイプ。筋肉強化、パワーアップは誤解

アシストスーツという視点でみると、すでに選ぶ時代に突入している。市販されている製品は、動力の有無、外観で分類できる。主に電動でモーターがついているものはアクティブタイプといい、例えばジェイテクト製のアシストスーツは、アシストがなめらかでパワー感が強い。動力がないものはパッシブタイプといい、人工筋肉、バネ、弾力性のある素材などを使用。軽量でメンテナンスが楽でより廉価だ。外観では、フレームをもつものを「外骨格型」、フレームを持たないものは内骨格型、衣服型と言われる。もちろん前者のほうが、パワーが出る。
知名度の高いイノフィス社の「マッスルスーツ」は、動力なし外骨格型。いかにもパワーアップできそうなデザインが魅力的だ。しかし、30キロしか持ち上げられない人が100キロのものをもてるようになるパワースーツ、ロボットスーツはまだこの世には存在しない。あくまでもアシスト、負担を減らすのが仕事だ。

腰に負担をかけない持ち上げ方を支援

腰痛の原因は、背骨の決まった場所に負荷がかかり続けること。予防はできるだけ背中をまっすぐな状態にしておくことだ。床においたものを持ち上げる時は、かがまずに膝をしっかり曲げて、腰を低い位置まで落とし持ち上げるのが正解。
腰痛対策のアシストスーツも、基本的に原理は同じ。荷重が一箇所に集中しないように分散させている。これはジェイテクト社のアシストスーツを装着した個人的体験。装着して、腰を曲げると背中が後ろに引っ張られたり、何かに吊り上げられているような感じがする。中腰姿勢が楽なのは発見だった。

農業では、「中腰維持」機能もアピール

農業分野では、「持ち上げ」「持ち下げ」「中腰維持」は必須機能だ。同じ製品が使われているので、当然、効果があるのだろう。介護でも、食事介助、ベッド上でのおむつ交換や体位変換、ベッドメーク、入浴介助と中腰になってしまう場面も多い。なぜ、中腰サポート機能があまりクローズアップされていないのだろうか?
考えられることの一つは、「持ち上げる」ことが業界内で歴史的に問題としてフォーカスされてきたことだ。介護職はくるくると動きまわっていて、ずっと同じ動作を続けることがないので、機能を打ち出しにくいというのもあるかもしれない。 ある作業に特化したものであれば、そこでの効果は高いが、他の作業については、逆に邪魔をする場合もある。
このバランスが難しい。まずは、使ってみてほしい。

沢木叶

介護福祉ジャーナリスト。
編集制作会社を経て専門新聞社へ入社、介護や福社・医療などをメインに扱い、業界誌編集長を歴任。歩行器・介護ロボットだけでなく、介護業界全般に精通し、審査員やセミナー講師など多数経験。