腰痛や体の不調を理由に、退職や休職をしてしまった職員はいませんか?
多くの介護職にとって大きな悩みとなるのが、腰の不調です。
事実、介護職員の退職理由として心身の健康状態の不調が1位というデータもあり、腰の負担は大きな退職リスクとなっています。
今回は介護職における腰痛と退職リスクについて、対策方法と一緒に解説します。 この記事を読むと腰痛を原因とした介護職員の離職を少なくする方法がわかります。
介護職の現状と介護職員の退職理由
65歳以上の高齢者数が増加し続けている中で、介護職に対するニーズも大きくなっています。
まずは介護職の現状と主な退職理由について見ていきましょう。
介護職の需要増加と人材不足
2025年問題として周知されているように、今後の日本は超高齢社会に突入します。
当然のことながら介護を必要とする高齢者の割合も増加し、介護職員に対する需要も大きくなるでしょう。
公益財団法人介護労働安定センターの調査でも、多くの介護事業所が介護職員の人材不足を感じているという結果が出ています。
今後は介護職員の育成だけでなく、介護職員の離職を減らす対策も必要になってきます。
参考:公益財団法人介護労働安定センター『令和3年度「介護労働実態調査」結果の概要について』
介護職員の退職理由の分析
介護職員が退職する理由として次の3つが多くみられます。
第1位:心身の健康状態の不調
第2位:職場の雰囲気や人間関係に問題があった
第3位:給与や賃金の水準に満足できなかった
1位の『心身の健康状態の不調』には、さまざまな理由があると思われますが、災害性腰痛の発生状況の多さからみても、腰の不調を訴える介護職は少なくないと予想できます。
参考:公益財団法人社会福祉振興・試験センター『社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士の「就労状況調査」(速報版)について』
参考:神奈川県労働局『神奈川県内における過去3年間(2019年~2021年)の災害性腰痛発生状況について』
介護職における腰痛の原因
腰痛が起こる原因は、主に次の4つが考えられます。
- 腰に負担のかかる姿勢をとっている
- 力任せに介護している
- 介護する相手との体格差がある
- 介護に適した環境が整っていない
最も大きな原因といえるのが、腰に負担のかかる姿勢をとっていることでしょう。
介護業務には、必然的に腰痛を引き起こしやすい姿勢が求められます。
おむつ交換や体位交換をするときに中腰になったり、移乗介助や入浴介助で腰をひねったりと、腰に大きな負担がかかります。
また正しい介護スキルを習得していないために、力任せに介護をする介護職が少なくありません。
力任せの介護は腰痛のきっかけとなり、さらに不安定な動きによって相手がケガを負う可能性もあるでしょう。
介護する相手との体格差も原因のひとつです。
相手が介護職員より大柄だと支えるために踏ん張ったり、反対に小柄だとしゃがんだりして、腰に負担がかかります。
最後は、介護に適した環境が整っていないことです。
たとえば、入浴介助をするときに脱衣所や浴室のスペースが十分でないと、腰に負担がかかる無理な体勢になってしまいます。
介護職員の腰の負担を軽くする、4つの方法
先で述べたように、腰の不調が原因で退職する介護職は決して少なくありません。
反対に対策をしっかり行うことで、退職者の減少に期待ができます。
主な方法は、次の4つです。
- 身体の使い方・姿勢の改善を促す
- 環境の改善
- 健康管理の徹底
- 福祉用具・福祉機器の活用
以下でそれぞれの詳細を解説します。
身体の使い方・姿勢の改善を促す
まずは正しい身体の使い方を理解し、姿勢の改善を促しましょう。
腰痛予防に適しているのが、介護技術の基礎でもある『ボディメカニクスの原理』です。
基礎的な技術ほど介護の経験が長くなるにつれ、つい忘れてしまったり、意識しなくなったりします。
ボディメカニクスを意識した介助は、介助者だけでなく介護される方の思わぬケガを防ぐためにも大切です。
また腰痛予防のストレッチを取り入れるのもよいでしょう。
勤務中の介護の合間にできる簡単なストレッチもあるため、介護の前後に小まめにおこなうよう促しましょう。
環境の改善
腰に負担をかけずに介護できるよう、職場の環境を改善しましょう。
たとえば、次のような環境改善が考えられます。
- ベッドの高さを調整する
- ベッドの位置を変えて、余計な動作を減らす
- 整理整頓して、介護しやすいスペースを設ける
- 照明を設置して、十分な明かりを確保する
- 室温を適温に設定する
ベッドの高さ調整や位置の見直しはコストをかけることなく、すぐにでも実施できます。
職場の環境改善は、介護職員の腰痛対策だけでなく利用者の安全確保にもつながります。
まずはできるところから、少しずつ改善を進めていきましょう。
健康管理の徹底
介護職員一人ひとりの健康を維持できるよう管理していきましょう。
- 定期的な健康診断
- 適切な休憩場所の設置
- 無理のないシフト
また腰痛がひどいときは交代したり、休んだりと、互いにフォローし合える職場環境づくりも大切です。
福祉用具・福祉機器の活用
最近は腰の負担軽減に役立つ、さまざまな種類の福祉用具・福祉機器が流通しています。
以下のようなものを活用すると、効果的に腰痛予防に取り組めるでしょう。
- スライディングボード
- スライディングシート
- リフト
- 電動ベッド
- 介護ロボット
これらの福祉用具・福祉機器を導入するためにはコストがかかります。
しかし、腰の不調による退職者が減少し人材採用・教育に関するコストを抑えられることを考えれば、有効的な設備投資といえます。
特に、介護ロボットの導入には自治体から様々な補助金が出ており、導入時に活用頂くことにより、大きく費用を抑えることができる場合があります。
介護職員の退職を防ぐために腰の負担軽減は不可欠
身体負担が原因で退職する介護職員は珍しくありません。
人材不足を解消するためには新規採用だけでなく、身体負担を解消して退職者を減らすことが大切です。
身体の使い方や姿勢の改善を目指すほか、環境の改善、健康管理の徹底、福祉用具・介護ロボットの活用を積極的に進めていきましょう。