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取材
2021.06.18

自立推進トレーニングロボットって何? 開発者に聞く、「J-Walker テクテック」

自動車部品メーカーのジェイテクトが3月から販売を開始した「J-Walker テクテック」は、歩行アシスト機能とトレーニング機能を組みあわせたこれまでにないトレーニング機器。自立推進トレーニングロボットと銘打った。開発者に狙いを聞いた。

楽しみながら歩行機能アップ目指したのはオンリーワン製品

介護ロボットの中で、真っ先に保険適用となったのが、パワーアシスト機能付きの歩行器だ。上り坂ではアシスト機能が働き、下り坂では自動でブレーキがかかり、スピードが出過ぎることがない。斜めの路面でも片流れせずにまっすぐに進むことができる。「安全性」が評価された。そこにさらに、トレーニング機能を付加したのが、「J-Walker テクテック」。
「介護現場は高齢者の自立支援を推進しています。オンリーワンの新しいトレーニング機器でそれを後押ししていきたい。それが自立推進トレーニングロボットというネーミングに込めた我々の思いです」
開発を担当しているイノベーション推進部アクティブライフ事業室第2ビジネスグループの本田修主任は話す。自動車部品大手のジェイテクトの中で、新規事業部門の開拓を担う部門だ。

ノルディックウォークの効果をロボット技術で再現

目指したのは、高齢者が自ら進んでトレーニングしたくなる機器だ。訓練室の平行棒での歩行訓練や、ジムのトレッドミルにはない楽しみがあり、安全かつ効果的に歩行訓練できる方法はないか。そう考えて、たどりついたのがノルディックウォークだ。
「ノルディックウォークでは、ポールを持った腕を大きくふるので上半身の筋肉も使うために、ただ歩くよりも効果の高い有酸素運動ができます。これをアシスト歩行器と組み合わせることで、安心して高い運動効果が得られるトレーニング機器になると考えました」(本田主任)。
テクテックはがっしりした歩行器のようだが、よく見ると、ポールの「柄」が上に突き出ていて、ここを握って、腕振りのように前後にスライドできる。腕の振りが、後ろ寄りだと、マシンが速すぎて歩いている人が遅れていると判断。
逆に前寄りだと、マシンが遅すぎて歩く人との距離が近くなりすぎていると判断。
利用者の歩く速さに応じてマシンが合わせられるように速度の制限を設けて安全性を確保したり、マシンの反応を切り替えることができるようにした。

この制御が開発にあたって一番苦労した点という。腕振りの機能を使わずに、モーターによるブレーキ機能の適度な負荷をかけた歩行トレーニングも行うことができる。
実際に腕振り歩行を体験してみた。上に突き出たポールを握ると、シャキッと背筋が伸び、肩甲骨も適度に動き自然とよい姿勢がとれる。
そして歩こうとしてポールを引くと、「テクテック」がすーっと動き出す。
ちょっと不思議な感覚で、正直戸惑いもあった。
「少し慣れる必要があるかもしれませんが、実は上肢と下肢を連動させるように意識して動かすことで、認知機能の向上につながると考えています」(本田主任)
難しいと感じたのもトレーニングの一部という。確かに慣れれば、スムーズに前に進めるが、現場では、導入時に時間をかけて使い方を覚えてもらう必要があり、賛否は別れそうだ。利用者としては、歩行に不安を感じはじめた要介護度の比較的軽度な高齢者を主に想定している。

「見える化」機能でより楽しく

もう一つの楽しみと位置付けているのが、「見える化」機能。スマホやタブレットとBluetoothで接続し、歩行データを正確に記録。目標を楽しく達成できるゲームや家族の応援の声を録音できる機能がある。
デイサービスなどでの歩け歩けの目標に、「東海道五十三次」はよくみてきたけれど、シルクロードや北米大陸横断ができたり、愛用者同士がオンラインで交流できるようになると、個人的にはワクワクする。ぜひ、ご検討を。

沢木叶

介護福祉ジャーナリスト。
編集制作会社を経て専門新聞社へ入社、介護や福社・医療などをメインに扱い、業界誌編集長を歴任。歩行器・介護ロボットだけでなく、介護業界全般に精通し、審査員やセミナー講師など多数経験。